グリーフケアの風景

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活動報告 グリーフケアの基礎知識

ワンストップサービスの普及とソフト面の充実を目指して

ワンストップサービスの普及とソフト面の充実を目指して

こんにちは。グリーフ専門士、寿月です。
寒暖差が激しいこの頃、夏の疲れも出やすい時期でしょうか。これを書いている今日、毛布を干しました。夏布団だけでもまだいけそうですが、寒さって急にやってくるイメージがありませんか? 私は毎年のように動くのが遅すぎたと後悔するので、今年こそは早めに。
皆さんも、服装や食事などで調整しながら過ごしていただきたいと思います。

それでは今日も書き進めて参りましょう。

拡がって欲しい流れ

大切な人や身近な人を亡くした後、家族には様々な手続きが待ち受けています。

・戸籍関係
・年金や健康保険・介護保険
・車やバイク・不動産関係
・クレジットカードや銀行口座の解約
・携帯電話や電子マネー
・税金関係や生命保険 etc

この他にも、亡くなった方の立場や所持していた物によって多岐に渡るでしょう。その全てに戸籍謄本やら住民票やら印鑑証明やら何らかの書類が必要で、亡くなってから何日以内、何か月以内と期限が設けられている手続きもあります。
私も、夫との死別後、残されていたカード類や通帳、車やバイクなどを前にして途方に暮れていたことを思い出します。何をすればいいのか、いったいどこから手をつければいいのか、とてもやり切れる気がしなかった。その間にもいろんな支払いはやってくるし、四十九日はどうしよう、お墓はどうしよう、それ以前に今、今日からの生活をどう賄っていくのかを考えていかなければなりません。
お葬式が終わってお骨が目の前に置かれていても、その現実を受け止めることだって難しい状況の中で、これら手続きは身体にも心にも負担となってのし掛かってきます。

離れて暮らすご家族が亡くなった場合は、その方が暮らしていた地域に出向く必要があるかもしれません。他にも、その人の出生から亡くなるまでの全ての戸籍謄本を要する手続きもあります。電話や郵送のやりとりで済むと言えども、それを辿ること自体が時間も労力も使う本当に大変な作業になりますね。

葬儀が済んだらまずは役所に、と動かれる方も多いでしょう。どうしていいかわからないからこそ向かうその現場にも、課題があるように思います。
普通役所というのは窓口が細かく分かれていますから、一つ手続きが終われば別の窓口に移動しなければならないことがあるでしょう。やっとたどり着いた窓口で「先に〇階の○○に行って手続きしてから戻ってきてください」と言われ、そちらにたどり着くと、また別の窓口へと言われる。対応してくれる人が変わればまた最初から事情を説明しなければならず、あっちに行ったりこっちに行ったり。
次の窓口への案内すらされず、結局何度も足を運ぶことになったというお話も聞いたことがあります。
このブログを読んでくださっている方の中にも、似たような経験があるかもしれません。
人生の中でも他と比べられないほどの大変な出来事に見舞われながら、その直後でありながら、これらをこなすことが求められる。それは致し方ないことなのかもしれませんが、だとしたら少しだけでも、何か工夫できることはないのだろうかと考えてしまいますね。

国としても、遺族の負担をできるだけ削減していく流れを推進しようとしているようです。

死亡・相続ワンストップサービス
https://www.digital.go.jp/policies/inheritance_onestop_service/

これらを実際に担当するのは市区町村です。現時点までの進みは自治体によってまちまちなようですが、全国に拡がっていくことを切に願います。

この動きに関連して、先日、当協会の井手代表が、東京の三鷹市役所職員の皆さんを対象としたグリーフケア研修を行いました。
三鷹市は『待たせない・書かせない・ワンストップ』をコンセプトにして、この10月より死別後の手続き専用窓口を稼働していく予定となっているそうです。
実は私も同行させていただきまして、開設に向けて準備が進む現場を拝見しました。
『おくやみ窓口』として専用の部屋が作られたり、専用のハンドブックが用意されていたり、その部分だけ見ても、足を運ぶ遺族の様々な状態を考慮されていることが感じられました。
ご依頼くださった担当の方含め、挨拶をさせていただいた方々それぞれが、グリーフケアに関心を持ち、関連の本を読むなどしながら遺族に本当の意味で寄り添うにはどうしたらいいのかを真摯に考えておられるご様子で、ありがたいなあ、心強いなあと胸が一杯になりました。

最も大事なのは『人』

こういった流れの中でも、最も大切なのは人なんだと井手代表は繰り返します。
どんなにシステムが整っていても、対応するのは人です。

私たち遺族は、「○○が亡くなりまして」と繰り返し事情を口にしなければならないことだけでも大きな痛みを感じます。そこここで渡される書類の「死亡した人」などの欄にその人の名前を書いたり、亡くなった日を書き込まなければならないこともつらさを伴う作業です。
私もその言葉を口にするたびに、書くたびに、胸に槍が突き刺さるように感じました。しまいには痛みすら麻痺して、機械的にその言葉を発していることに気づいた時、自分が空っぽになったように思いました。
口を代え声を代え聞かされる「ご愁傷様です」という言葉に頭を下げ続けながら、とんでもないことに巻き込まれていくように感じていた。窓口の椅子に座って、あるいは立たされたまま、頭の中でずっと夫に助けを求めていました。
胸に抱えていた鞄の中では、家を出る前に確認を繰り返した、印鑑や死亡届や通帳や保険証や年金手帳などがガサガサ音をたてていた。そんなことだけは鮮明に覚えている。
家を出るのだってしんどい状態です。もっと言えば、息をしているだけでしんどいくらいなのです。その中でなんとか必要書類を整えて、やっとたどり着いたその先で、あっちに行けこっちに行けと言われたり、早口でまくし立てられたら、どうでしょう。ため息をつかれたり、傷つくような言葉を投げかけられたら、どんな気持ちになるでしょう。

私の経験の一つをお話しますと、確か夫の準確定申告関連の機関に出向いた時だと記憶していますが、対応くださった方が使う言葉がはじめて耳にするものばかりで、まるで別の国の人と話しているように感じました。

○○を△して★したものと、■を▲して◎したものを添付して提出ください。

今はわかりやすくするために短くしていますがこの倍以上のものを一気に伝えられ、ただでさえ混沌としている頭ですから、全然ついていけない。その方にとっては業務内で日常に使い慣れた言葉なんでしょうし、伝え慣れたリズムなのかもしれません。そして私の常識のなさが根底にある。ですがなんというか、救いがないような気持ちになるんです。
「ごめんなさい、もう一度お願いします」
「○○は何を指していて、△ってどういうことでしょう」
こんな質問を何度も繰り返しましたが、そのたびに聞きなれない言葉が増えていくばかり。結局その日は、枠の時間が過ぎたということで、何一つ理解できないままに帰されました。頑張って家を出て、電車とバスを乗り継いでなんとかたどり着いたんですけどね。疲れてしまって、よくわからない涙も出てきて、それを愚痴りたい、一番共感してくれるはずの相手がいない家に帰るのは本当につらかった。

今回の研修でも、グリーフとはどういう状態か、そこの理解を深めるために長く時間を割いていました。
窓口の方の話についていけないこと、何を話されているのかわからなくなることもありますね。今聞いたはずのことが抜けてしまったり、誤字や脱字をするかもしれない。日頃聞きなれない言葉が並びますから、目の前の書類の文字を追うことすら難しい場合もあるでしょう。平常時であればなんなくこなせるものにも時間がかかるでしょうし、急に感情が込み上げてくることもあるかもしれません。
一見落ち着いて見えても、やり取りの中で時に笑顔が見えても、遺族の心や状態は計り知れないということ。涙を流さないからといって、「しっかりしている」わけではない場合も多々あります。哀しみや混乱の中で煩雑な手続きをいくつも抱え、身体も心もギリギリのところでなんとか保っている。何がどうなってこうなったのか理解しきれないままに、とにかく気を張って頑張られている方もたくさんいらっしゃる。
大きな経験の後の私たちは、ある部分麻痺しながら、ある部分はとても敏感になっています。そういう状態の時にかけられる言葉や示される態度は、防御なく心に届いてしまうものかもしれません。

グリーフケアという意識を持って、一人一人がやれることを考えていく。三鷹市の研修、聴講された皆さんからはその決意を感じましたし、忙しい業務の中でも工夫できることを探していこうという姿勢を見せていただきました。
そして私自身もあらためて、自分の言動を振り返る時間となりました。

日本グリーフ専門士協会では、企業、自治体、学校など、さまざまな対象に合わせての研修を行っております。誰しもがいつか経験する大切な人や身近な人との死別。仕事上で関わる方にも起こっている可能性があります。その際に工夫できること、一緒に考えていけるといいですね。
https://grief-japan.net/activities/lecture/ (グリーフケア講演・研修/オンライン・オフライン対応)


編集後記

今日も最後まで読んでくださりありがとうございます。
私は昔からバレーボール観戦(テレビです)が大好きで、夫が生きていた頃は試合スケジュールを前もって確認して、リアルタイムで観るためにその日の動きを調整までしてテレビにかじりついていました。夫はいつも苦笑い。でも、闘病がはじまってからはどうでもよくなっちゃって、オリンピックですら観る気にならなかった。
最近、世界バレーが始まったことを偶然知りました。ちょっと観てみようかという気持ちになった。観てみたら「好き」が少し戻ってきていることが実感できた。そんな小さな変化に、クスっと笑っています。

オンラインによる「わかちあいの会」(無料)・個人カウンセリングの日程確認とお申し込みはIERUBAへ。

また、グリーフケアを学ぶ第一歩「グリーフケア/ペットロスケア入門講座」も無料で開講しています。支援者として活動したい方はもちろんのこと、グリーフの渦中におられる方にもご参加頂いております。今のご自分の状態を、少し客観視できるようになるかもしれません。私もここから学びはじめました。