グリーフケアの風景

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活動報告

『地域で取り組むグリーフケア・遺族ケア』久留米市市民公開講座レポート

『地域で取り組むグリーフケア・遺族ケア』久留米市市民公開講座レポート

こんにちは。グリーフ専門士、寿月です。
5月28日に、福岡県久留米市で『地域で取り組むグリーフケア・遺族ケア』と題し市民公開講座が開催されました。
主催したのは、久留米市で活動しているグリーフ専門士の仲間たちです。彼女らはグリーフケアCafe~やすらぎの部屋~というわかちあいの会を地域開催しています。

私、寿月も現地の様子を肌で感じるべく行ってまいりました。
今回は、当日の雰囲気も含め、地域でグリーフケアを広げていく取り組みをご紹介できればと思っています。

それでは今日も書き進めてまいりましょう。

100名近いご来場

公開講座当日は晴天に恵まれ、約100名近い方がご来場くださいました。
来場者をお出迎えしたのは、グリーフケアCafe~やすらぎの部屋~でセラピードッグとして活躍している、ティアラちゃんとロゼちゃんでした。

わかちあいの会には、話すことが難しいご状態でご参加されたり、当然涙される方もいらっしゃいます。そのような方々が、ティアラちゃんやロゼちゃんを抱きしめたり撫でたりすることで心を溶かれていく、久留米市でのわかちあいの会には欠くことのできない存在となっているそうです。
私も触れ合ったことで、寄り添うことの本質をあらためて教わったような気がしています。体温であったりしぐさであったり醸し出すもの、ただそこにいるだけで伝わるもの。
地域開催のわかちあいの会だからこそ感じるぬくもりを、ティアラちゃんとロゼちゃんが体現してくれているのかもしれません。

 
基調講演は久留米大学保健管理センター教授、安川秀雄先生が務められました。
『先逝く人々からの贈りもの 喪失体験からの気づき』

安川先生もグリーフ専門士のお一人であり、やすらぎの部屋でご参加くださる方と共に時間を過ごされています。
最愛の人との死別のご経験、その後のご自身の不調や変化からグリーフケアの重要性をお感じになり、当協会で学びを深めてくださいました。
今回の講演では、ご自身の経験を通して、医師であり大学教授というお立場からも大切な人や身近な人の死とどう向き合うか、「大きな痛みや哀しみの経験がその後の成長につながる」という概念をわかりやすくお話しいただきました。

グリーフケアCafe~やすらぎの部屋~代表 古賀千鶴さん
グリーフケアCafe結生(ゆい)代表 鬼塚友実子さん

お二人からは、グリーフケアに関わるようになったきっかけの経験や、どんな想いで活動に携わっているか、それぞれのわかちあいの会の特徴などの報告がございました。
二人のお話、そして今回の公開講座を支えた専門士たちを通して感じたのは、私たちの協会が大切にする「横のつながり」の意義です。
わかちあいの会で皆さんをお迎えするグリーフ専門士/ペットロス専門士、その多くが死別や喪失を経験しています。
グリーフケアを学んでいるとはいえ、哀しみを克服して活動しているわけではありません。むしろ哀しみと共存しながら生きています。
死別は、それまでの生活や人間関係が一変してもおかしくない出来事。それまでのつながりが断たれたように感じることがあるかもしれません。
一人だと感じながら生きることは簡単ではありませんね。

再び何かとつながっていると感じられる。

その感覚を育んでゆくことも、グリーフケアの大切な役目の一つです。
今回集った仲間それぞれも哀しみの中を懸命に生きながら協会と出会い、つながりを育てて力に変えてきた。グリーフケアの必要性を実感してきたからこそ広げていきたいと奮闘してくれています。

https://grief-japan.net/care/griefcare/(全国のわかちあいの会)


特別講演として、日本グリーフ専門士協会代表理事 井手敏郎も登壇いたしました。
『グリーフケア 哀しみと生きる』 

会場には多くのご遺族も足を運んでくださっておりました。
死別後に沸き起こる想い、身体の状態、社会生活への影響など、知識をお伝えすることは、ご自身を大切にしていただくための取り組みでもあります。
「ときに“死にたい”というお気持ちを抱える遺族を支える取り組みは、自殺防止にも繋がる、今社会的にも重視される活動になり得る」とのお話も印象に残りました。

グリーフケアが当たり前の社会を目指して

この度の市民公開講座は、「グリーフケアという言葉を一人でも多くの方に認知していただきたい」という想いから企画されました。

「死別した人への取り組みなんて、なんだか怪しいから行かないほうがいいと子供に止められたのですが……」

わかちあいの会にご参加くださる方の中には、このようにお話される方がいらっしゃいます。
グリーフケアという言葉が浸透していないことで生まれる不安の一つかもしれません。

以前このブログにも書きましたが、私自身も、グリーフケアがどんなものかを知らない中で当協会にたどり着いた時は、なにか売りつけられたりするんじゃないかと散々怪しみ、疑い、サイト内をくまなく読み込んで、それでも一歩を踏み出すことが怖くて、何日も悶々とした時間を過ごしました。
わからないものに警戒心を持つのは自然なことですね。

久留米市のグリーフケアCafe~やすらぎの部屋~は、市から助成金をいただきながらの活動です。
今では、市に相談に来られた遺族の方にやすらぎの部屋を紹介くださるようにもなっており、市の中でも必要な活動として機能しております。
公開講座も久留米市や保健所、久留米大学保健センターが後援くださっており、職員の皆さんそれぞれが、必要な方に届くようにご尽力いただいたと聞いております。
当日も多くの職員の方が足を運んでくださって、メモを取りながら熱心に聴講されているお姿が心に残りました。
 
やすらぎの部屋の代表である古賀さんが活動を立ち上げた当初は、お会いする方ごとに、「グリーフケアとは何か」を説明するところからはじめたそうです。そしてその働きかけは今も続いています。
久留米市の行政がグリーフケアの大切さ、私たちの活動に信頼を置いてくださったことは、わかちあいの会に足を運んでくださる方の安心にもつながるとても大きなことだと思います。 

もしかしたら、グリーフケアは急速に広がっていくものではないかもしれません。一つ一つの機会、お一人との出会いを大切にしながら、つながりを作り、ゆっくり誠実に、丁寧に育てていく広がりのようにも思います。
その中で、今回の公開講座では100名近い方に「グリーフケア」を知っていただきました。直接お顔を見ながらお伝えすることの意義を感じましたし、県外から足を運んでくださった方がいらっしゃったことからも、「グリーフケア」が地域で求められている活動であることが感じられます。
本当にありがとうございました。

講演後には、多くの方が井手代表の著書『大切な人を亡くしたあなたに知っておいてほしい5つのこと』を手にしてくださり、聴講くださった方々からは、こちらが励まされるようなあたたかいお声がたくさん届いております。
「もっといろんなところでグリーフケアCafeをやってほしい」
という切実なお声もありました。

グリーフケアという言葉を知らないだけで、グリーフケアにたどり着けない方がたくさんいらっしゃいます。

日本グリーフ専門士協会では、企業、自治体、学校や医療機関などさまざまな対象に合わせての研修/講演を行っております。
https://grief-japan.net/activities/lecture/(グリーフケア講演・研修/オンライン・オフライン対応)
哀しみが打ち明けやすい、あたたかい社会を広げるために、どうかお力をお貸しください。

編集後記

死別後のおつらい中で自ら検索しなければたどりつけない状況を変えていくためにも、わかちあいの会/カウンセリング総合サイトIERUBAのパンフレットの配布や設置にご協力いただけますと幸いです。

https://ws.formzu.net/dist/S53127619/(日本グリーフ専門士協会IERUBAリーフレット申込フォーム)


オンラインによる「わかちあいの会」(無料)・個人カウンセリングの日程確認とお申し込みはIERUBAへ。

また、グリーフケアを学ぶ第一歩「グリーフケア/ペットロスケア入門講座」も無料で開講しています。支援者として活動したい方はもちろんのこと、グリーフの渦中におられる方にもご参加頂いております。今のご自分の状態を、少し客観視できるようになるかもしれません。私もここから学びはじめました。