グリーフケアの風景

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イベント案内

喪失体験をした私たち、それぞれの生きるカタチ

喪失体験をした私たち、それぞれの生きるカタチ

こんにちは。グリーフ専門士、寿月です。
先日、現代アート展にお邪魔してきました。

清水伶 映像インスタレーション展
【あなたがいない「  」を、どう埋めるかさがしています―何かを失いながら生きていく私たちの声とグリーフケア―】

インスタレーションとは、展示空間を含めて作品とみなす現代美術の表現手法で、その中でも映像を用いたものを映像インスタレーションというそうです。
インターネットで調べますと、「空間全体を作品として構成し、観客がその空間を体験する。鑑賞者は作品の中に入り、五感を使ってアーティストの世界観を楽しむことができる」との説明もありました。 

こちらの展示を主催したアーティストの清水伶さん、NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]で各種プログラムの企画を手掛けていらっしゃる堀内菜穂子さん、そして、日本グリーフ専門士協会の井手代表でのトークショーもありました。

今回は、こちらにお邪魔しての感想などを前編、後編に分けてまとめてみたいと思います。

何かを失いながら生きていく私たち

会場には、様々な喪失体験をされた方々の告白が、いろんな形の映像作品として展示されていました。まさに生の声です。
耳や目からというよりも、皮膚や毛穴からいろんな語りを受け取って、内側がぶるぶると震えるような感覚がありました。

作品から作品へ移動する度、答えが見えなくなるというか、答えがないということを突きつけられていくような。
没頭するほどに内側に生まれる言葉が追いつかない、言葉を見失っていく感じ。
作品に吸い込まれるような感覚はあるのに、同時に、会場にいる他の鑑賞者たちの気配もやたらと濃く感じられて、なんというか、自分がどこに焦点をあてているのかも曖昧になっていく。

言葉を見失っていく感じや、守っているはずなのにむき出しになってしまっている感覚、だから傷ついたり圧倒されたり、そして答えがどこにも見当たらない絶望感。 
これは私自身が大切な人と死別した後に感じていた状態にとてもよく似ている。そう気づいた時には鳥肌が立ちました。

グリーフという言葉を知らない方には、これらアートを通して、私たちが感じている混沌とした世界の一面に触れていただく時間になるかもしれませんし、ある人の生き様と交わる瞬間になるかもしれません。


アート展のパンフレットにはこのような言葉があります。
『悲しみやつらさだけでなく、そこで浮かび上がってくるのは「今をどう生きているか」ということ。私たちがこれからを生きるヒントが見えてくるかもしれません。』

人生の中にグリーフ(悲嘆)は死別に限らず様々にあって、私たちはその繰り返しの中を生きているとも言えます。
大切な人や身近な人と死別した後、あなたがいない「  」をどう埋めるか、その答えは簡単には見つけ出せるものではないかもしれない。
でも混乱の中でも日々は続いていき、さまざまな感情に翻弄されながら懸命に今を過ごしている。

過ごし方にたった一つの正解はなく、また、全く同じ道のりもなく。
だからこそ心細いし不安だし、消えてしまいたいほど苦しい。

会場には、そのような気持ちを抱えて生きてきた人たち、あなたがいない「   」をどう埋めるかをさがしてきた人たちの、どなたか(あるいは喪失した何か)に語りかける手紙もたくさんありました。
手紙を読ませていただいていると、どんな気持ちを持っても、その喪失とどのような向き合い方をしても(向き合わなくても)、全部自然なことのように思えてきます。

グリーフ(悲嘆)を抱えながらも毎日寝て、目覚めて身体を起こして、ご飯を食べて、風呂に入ったりトイレに行ったりしながら過ごしてる私たち。
何か特別なことをしているわけではなくても、そうやって黙々と基本的な人間の営みを重ねている自分をもっと労っていいのかもしれない。愛おしんでもいいのかもしれない。そんな気持ちが込み上げてきます。

でもけしてきれいごとにはなっていないし、きれいごとで片づけられないからグリーフだということも突きつけられる気がします。

大切な人や身近な人を亡くしたご経験のある方は、無理のない鑑賞をおすすめいたします。

グリーフケアにたった一つの正解がないように、アートについても感じ方に正解はないのかもしれません。もっというと、感じても感じなくてもいいし、わかろうとすることの裏には傲慢さが隠れているということにも気づかされます。

ここに書いたことはあくまで、私が感じたこととして受け取っていただければ。


展示を主催したアーティストの清水伶さんご自身も、様々な喪失を経験されたお一人。

清水伶 映像インスタレーション展
【あなたがいない「  」を、どう埋めるかさがしています―何かを失いながら生きていく私たちの声とグリーフケア―】
~2.16(日)まで。
11:00~20:00
上野spaceバズチカ
(台東区上野2-10-7 B1F)
入場無料
https://www.miureel.com/anaina/

※後編ではトークショーについて触れてまいります。

 

編集後記

今日も最後まで読んでくださりありがとうございます。
ご紹介したアート展は、台東区の芸術文化支援制度対象企画となっています。
グリーフケアという言葉を知らない方にも、触れていただく機会になりますように。


〇オンラインによるわかちあいの会(無料)・個人カウンセリングの日程確認とお申し込みは「グリーフサポートIERUBA」へ。

哀しみに寄り添うグリーフケア基礎講座
大切な人や身近な人と死別され、哀しみの渦中にいらっしゃる方にもご参加いただける講座となります。
死別後の暗闇の中、知識が今を生きる支えとなりますように。

グリーフケア入門講座ペットロスケア入門講座
こちらの講座は無料で開講しています。
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私もここから学び始めました。