グリーフケアの風景

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インタビュー

入門講座の担当講師に話を聴いてみた① 村野直子講師 前編

入門講座の担当講師に話を聴いてみた① 村野直子講師 前編

こんにちは。新人グリーフ専門士、寿月です。
日本グリーフ専門士協会が開催している『グリーフケア入門講座』は、グリーフとは何か、喪失体験後の心の変化などをわかりやすくお伝えする2時間の講座となっております。私も自分を試す(2時間座っていられるかなど)意味もあってこの講座から学びはじめましたが、無料といえども、最初の一歩を踏み出すのには勇気がいるものです。

講師ってどんな人? 
参加しているのはどんな人たち?
私なんかが飛び込んでいいのかしら? 

自身の状態や講座内容もさることながら、小さな不安や疑問がたくさんあって、受講を躊躇してしまうことがあるかもしれません。
そこで今回は、入門講座を担当されている講師のお一人、村野直子さんにお話を伺いました。私自身が感じてきたことを絡めながら、いろんな角度から率直に質問をぶつけています。ご検討の際のヒントにしていただけたら幸いです。

*協会では横のつながりを大切にする意味もあって、それぞれが呼ばれたい名を提示しています。村野講師のことは、なおさんと呼ばせていただいていることをお伝えしておきますね。

それでは今日も書き進めていきましょう。

グリーフは、関係ない人のいないテーマなんです。

なおさんは当協会認定のグリーフカウンセラーだけでなく、産業カウンセラーやサイモントン療法認定カウンセラーなどの資格もお持ちで、企業で働く人のメンタルヘルスケアや国立大学の教職員やスタッフのカウンセリングに携わると共に、個人のホームページより依頼を受けてのカウンセリングもされています。
そして、現在は受け入れが難しい状況になっているとのことですが、病院の緩和ケア病棟のボランティアとして、患者さんのお気持ちに寄り添う活動などもおこなっているとのこと。
当協会においては、グリーフを抱えた方々の個人カウンセリングを受け持ちながら、入門講座の講師、そしてその先のグリーフ専門士ベーシックコースも担当されています。

――グリーフケアに携わる(学ぶ)きっかけはどのようなものだったのでしょう。

一つは、友達がペットを亡くしてすごく落ち込んでいて。私も実家ではペットと暮らしたことがあったのですが親が主導で、自分が責任を持って共に暮らしたという感覚がなかったんですね。なので話を聴いていても、わかってないなあと感じた経験がありました。
もう一つは、カウンセラーとして様々な方からお話を聴かせていただいている中で、表面上は仕事の悩みであるとか人間関係の悩みなのだけれど、よくよく聴いていくと、実は尊敬していたお父さんを半年前に亡くされたとか、内側に悲嘆が絡んでいる場合が結構あったんです。悩みの根底にあるグリーフについてちゃんと学ばないと、きちんとお話が聴けないと実感したこと。
私自身、父を幼少期に亡くして、母親代わりだった祖母とも5年前に死別したというのはあるんですけれど、どちらかというと、身近な人の話を聴いたりカウンセラーとして仕事をしていく中で、学びを深めたいと思ったことがきっかけとしては大きかったように思います。
それで、私も入門講座から学び始めたんですよ。

――そうだったんですね。入門講座を受講されていかがでしたか?

死別だけじゃなくいろんなグリーフがあって、関係ない人はいないんだなあと思いました。広い意味までのグリーフ、その方に起こっていることに気づきながらというか、起こっている可能性があるかもしれないという視点を持って関わることの大切さを知りました。そして、じゃあ実際にどうやってお話を聴けばいいんだろうとか、どう関わっていけばいいんだろうというところを学びたくなって、ベーシック講座を受講して、そこからは一気に進んだ感じですね。一つの講座が終わると、また次を学びたくなるんです。

――そうなんですよ、不思議(笑)と次を知りたくなるというか、試したくなるというか。現在は講師という立場のなおさんも入門講座から段階を踏んで進んでこられたと知れて、なんだか親近感がわきます。入門講座を担当されるようになったのはいつからですか?

2019年からですから、3年目になりますか。

――その間に、なおさんの講座でたくさんの方が学ばれたと思うのですが、受講されるのはどんな方たちなんでしょう。

本当にいろんな方が学びにきてくださっていますが、医療や福祉業界におられる方、そして葬儀関係の方が多いですかね。そしてご自身が死別経験があって間もない方や、哀しみの中におられる方でしょうか。

――やはり大きく分けるとそのどちらかになりますか。

全く違う分野で働かれている方や死別経験がなく来られる方も少ないわけではありません。仕事上で何か役に立てたいとか、身近にいる人の力になりたいという方でも、ご自身の内側の広い意味でのグリーフに気づかれたり、そこに気づきながらも蓋をしてきたからこそグリーフケアを学ぼうと思われる、ということもありますね。先程も言いましたが、受講くださる方を見ていても、関係ない人はいないなあとつくづく思います。
死別経験のあるなしや、死別からの年数であるとか、そういう部分で踏み出せないでいる方もいると思うのですが、そこはあまり気になさらないでいただきたいですね。

今こそグリーフケアが必要だと感じています。

――昨年からのコロナの状況もあり、社会がこれまでとは大きく変わったと思うのですが、そういった流れの中で、受講される方に変化などは感じられますか。

まずベーシックコースを受講されている方からの声で、以前よりストレスが増えているのに、今までできていたセルフケアができなくなってしまったと伺うことが多くなっていますね。でかけることにも躊躇せざるをえないような状況が長く続いているところもありますから、制限がありながら自分を調整していくことの難しさ、でしょうか。
そしてこれは、実際のところはわからないですが、個人的にもしかしたらと感じていることで、先が見えない状況があり誰しも不安を抱えやすくなっていることもあってか、新しい一歩を踏み出す意欲というか、そのエネルギーがなかなか出てこない人が多いのかなと思ったりします。
でもだからこそ、今こそグリーフケアが必要だと感じています。

――誰もが日常的に迷ったり、我慢したり、選択を迫られたりしている。もはや自然と「コロナ前提」で物事を考えるようになっちゃったなあと私自身も感じているところですが、そういう今だからこそグリーフケアが必要だと。

そうなんです。グリーフ=死別と捉えられがちだけれどそうではなくて、今まで普通にできていたことが自粛のもとできなくなったり、いろんな制限がある日常を送らざるを得ないって、誰にとってもある種のグリーフになってしまっている可能性がありますよね。

――おっしゃる通りです。飲食に携わる皆さんなんかはまさしく仕事を続けていけるのかという局面に立たされていたり、そのように表面化して問題定義されていない部分、それこそ日常レベルにも影響がたくさんあって。「できない」を積み重ねる日々になってしまっています。その中でみんな、頑張って生きている。

どの人もその人なりの何かを抱えていると思うんですよね、諦めることも多い。そういう意味で、グリーフケアって、今だからこそ必要だと思います。ベーシックコースの内容には、現在のような状況の中での辛さを和らげたり、少し前を向けるヒントになるようなものがたくさん詰め込まれているので、こういう時代だからこそ、一歩を踏み出していただけたらなと。

――なおさんの熱い想いが伝わってくるようなお話でしたが、なおさんは、実際グリーフケアを学ばれて良かったなと感じることはなんでしょう。

今まで気づけなかったことに気づけるようになったといいますか、目の前で起こっていることを、ただいいとか悪いだけで判断することって多いし、自分もそうしがちだけれども、その背景にあるその人の想いであるとか、奥に隠れているような辛さや不安に視点を向けられるようになる、そんな力をつけてくれるのもグリーフケアの魅力だと思います。そして誰かを支援するとかしない以前に、自分をそういう視点でみることができると、自分が癒されたり、らくになったり、成長できたりする。自分のためになるということが根底にある気がします。

 

次回、後編に続きます。

編集後記

今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。残暑厳しい近頃ですが、それでも風の中に秋のにおいを感じる季節となりましたね。時には流れに身を任せながら、季節の移ろいを感じてみるのもいいかもしれません。

日本グリーフ専門士協会では「わかちあいの会」を無料開催しており、全国どこからでもご参加いただけます。お申込みいただきましたら、ZOOM(オンライン会議システム)の使い方等もメールで案内させていただきますのでご安心ください。

また、グリーフケアを学ぶ第一歩「グリーフケア・ペットロスケア入門講座」も無料で開講しています。支援者として活動したい方はもちろんのこと、グリーフの渦中におられる方にもご参加頂いております。今のご自分の状態を、少し客観視できるようになるかもしれません。私もここから学びをはじめました。