グリーフケアの風景

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インタビュー

入門講座の担当講師に話を聴いてみた① 村野直子講師 後編

入門講座の担当講師に話を聴いてみた① 村野直子講師 後編

こんにちは。新人グリーフ専門士、寿月です。
10月に入っても夏のような暑さが続いたり、かと思えばトレーナーを着こむような気温になったり。子供の頃には季節の変わり目に弱くて、年中行事のように体調を崩していたことを思い出します。
私の近況を少しお伝えしますと、夫の一周忌を終えて少しした頃からでしょうか、ちょっと腑抜けたような時間が多くなっていて、何も予定のない日はひたすら横になっています。そして悶々としています。動けない自分にも〇をしてほしいというようなことをここでも書いているくせに、自分にはなかなか〇がつけられなかったりする。焦ったり責めたり、そんな自分を嫌悪することも多いです。でも私は自分に言い聞かせています。「これが一生続くわけではない」と。季節が移り替わっていくように、やがては抜けていく。そう信じるしかできないけれど、これまでだって何度もそういう流れはあったから、それを超えてきているのだから、私はきっと大丈夫。
このブログを読んでくださる方の中にも、今まさにお辛い中で過ごされている状況があるかもしれません。自分はもう二度と立ち上がれないのではないかと不安になられているかもしれない。辛いけど、苦しいけど、共に今をやり過ごせるといいですね。

今回は入門講座、グリーフ専門士ベーシックコースの講師をされている村野直子さん(なおさん)のインタビュー後編をお届けします。お辛い中で学ぶと選択することはなかなか難しいかもしれませんが、私も自分が今みたいに落ちている時、焦ったり責めたりしながらもその先を信じようと思えるのは、この学びと出会えたからです。
もちろんご無理のないところでというのは大前提ですが、たくさんの方に触れていただけるといいなあと思っています。

それでは今日も書き進めていきましょう。

揺らぎの中で学ぶ意味

――では今度は講師という立場から、なおさんが入門講座やベーシックコースで心掛けていること、大切にしていることなどを教えていただけますか。

ひとつは、講座内でもお話しますが、哀しみや抱えているものは一人一人違いますから、比べるものではないということでしょうか。お一人お一人が感じるものがそのものであるわけですから、それをきちんと受け止めるよう心掛けています。
あとは、たとえば深い哀しみを抱えていらっしゃる方などは、学ばれている最中に迷われる方もいます。「自分がここにいていいのか」「こんな状態で続けていいのか」。そんなふうに自分の力がなくなっていると感じられている方でも、私はその方の中にある力を信じています。今は無理しなくていい、休んだっていい、でもちゃんとこの先に光が見えてくるからどうか諦めないでいてほしいとお伝えしています。
本当に、学びを進めていく中で変わられている方が多いんです。入門講座では、画面も出せず(ZOOMでお顔を出さずに聴くことで参加される)にいた方がベーシックコース(全4回)にこられて、1回目2回目はとても緊張されたご様子でいて、3回目に少し表情が和らぐというか、その方の個性がちょっと見れて、それを受講生を含めみんなで温かい雰囲気の中で共有できて、4回目に笑顔が見られるということがある。これはすごく嬉しいです。

――私もそんな感じでした。最初は、画面に映る自分が嫌になるほど固い表情をしていて、心の中でも「もう無理なんじゃないか」「私は邪魔なんじゃないか」「迷惑をかけているんじゃないか」なんて言葉がぐるぐるしている。でも講師や共に学んでいる受講生が、どんな自分も受け入れてくれている、私の哀しみを共有してくれている、そう思えると少しずつ変わっていくんですよね。4回が終わってしまう頃には「もう終わっちゃうのか!」になっていました。

そう言ってくださる方が多いです。でもそれは、やっぱりその方の内側にある力なんだと思います。皆さん真剣だからこそ、迷ったり揺らいだりする。私も受講生のみなさんに、毎回いろんなことを教えていただいてます。
画面を消してもいいし、パスしてもいいし、無理のないペースで進んでいただく配慮はしていますので、本当に、安心して申し込んでいただければと思います。

――支援者を目指すうえでも、まずは自分を大切にしていく。もっと言っちゃうと、グリーフケアに携わる携わらない関係なく、生きていくために自分で自分を大切にし、また大切にされる経験を重ねていきたい。それができる講座になっていると私も思います。
皆さんに安心して受講していただくためには、講師としても安定感が求められると思うのですが、なおさん自身の心の整え方であるとかリラックス法など、何かありますでしょうか。

過去の私は、自分に休むことをなかなか許可できなかったんですよ。無理して引き受けたり、嫌と言えなかったりして、体調を崩した時期もありました。
今はとにかく、自分の心の声と身体の声をちゃんと聴いたり感じたりして、無理しないようにしています。嫌だとか恐れているとか不安になっている自分にもちゃんと気づいてあげて、受け止めて、休んだり自分が喜ぶことをする。
でももっと手前で、そこまで追い込まれないように、今この瞬間を味わうようにしています。

――味わう、ですか。

そう。これ美味しいとか、お風呂気持ちいいとか、お花見てきれいとか、そういう一つ一つをしっかり味わうんです。
皆さん毎日のように携帯は充電するけど、自分の充電は忙しいからと後回しにしちゃいがちじゃないですか。味わうって、充電に近い感覚ですね。日々、ケアです。そうすると感謝が出てくるんですよね。ああお風呂に入れてありがたいなとか、こんな美味しい果物味わえてて幸せだなとか、とっても豊かな気持ちになりますよ。

知識を詰め込むだけの時間ではない

――なるほど。味わう、いいですね。その時その瞬間をとても大切にできそうだし、日々の活力が充電されていく感じでしょうか。毎日忙しく過ごされている方にも参考になるお話をありがとうございました。
さて、入門講座は、必ずしも受講しなければ先に進めないものではないわけですが、それでも「講座」として開かれている意味はどこにあるとお考えですか。

支援者を目指す方が、グリーフってどういうものなんだろう、この分野は自分にとって学んだほうがいいものなのかなどを確認する場だというのはまずあります。
それと同時に、わかちあいの会とは別の視点で、自分のグリーフに気づいたり、見つめられる場だとも感じています。

――確かに、死別に限らず、人生にはあらゆるグリーフがあることを知れるだけで、自分があの時(あるいは今)感じていたのはグリーフなんだと納得できたりしますよね。もしかしたら過去の自分と向き合う時間になるかもしれないし、この先の経過を知れる時間になることもあるだろうし。

そうなんです。協会の講座はどれもそうですが、知識を詰め込むだけの時間ではないですから、参加される方の気づきはそれぞれにみんな違うと思います。そこが大事なところで、関係ない人はいないテーマだと感じている理由でもありますね。

――逆に、講師であるなおさんにとっては入門講座はどんな時間ですか。

当然、はじめましての人ばかりなんですけれど、そんな皆さんが、友達や同僚にも話さないような、普段あまり口にしないようなご自身のお話しをしてくださる。考えてみると、特別な時間であり特別な空間なんですよね。なんて言ったらいいんでしょう、不思議だけど温かいですね、毎回。そしてすごく考えさせられる時間でもあるし、気づかせていただく時間でもあります。

――最後に、入門講座、ベーシックコース、受講を迷われている方にメッセージがあれば。

百聞は一見に如かずではないですが、参加したからわかることってたくさんあると思うんです。ご自身がグリーフを抱えた方にとっては、もしかしたら「講座」となるとハードルが高く感じられるかもしれませんが、学ばなければいけないというスタンスではなく、ご自身のグリーフケアのために、ちょっと話しを聞いてみようかな、せめてこの時間だけリラックスしようかな、ということでいいと思っています。リラックスする中で、心に響くものがあれば、それが今のご自身にとって大切なことなのかもしれないですよね。

――そうですね。講座ではあるわけですが、私にとっては居場所でもありました。毎日しんどい中にいるけれど、せめてこの数時間は自分に正直でいようというか、それが許される場でもあった。

もし私が今、哀しみの真ん中にいたら、学ぼう!なんて思えない。そんな元気ないと思うんですね。でもその場にいてなんとなく話を聞いていたら、辛さの中で過ごすヒントが見えてきた、ということもあるんじゃないかなって。講座の内容には、そういう部分もしっかり入っていますので、安心して参加いただければと思います。
一方で、支援者を目指す方にとっても、セルフケアを含め、目指す上で大切なことが盛り込まれていますし、他の受講生のお話の中からも気づくことがたくさんあるのではないでしょうか。
どんな立場の方にも、何か響くもの、残るものがある講座になるよう努めて参りますので、ぜひ参加をご検討いただければと思います。

お話をお聴きして

実は、なおさんとちゃんとした形でお話しするのは今回がはじめで、いつものごとく緊張していたのですが、一つ一つの質問に、しっかり時間をかけて考えながら答えてくだる姿に、誠実なお人柄を感じました。
スポーツはやるのも観るのもお好きだそうで、スキーやテニス、ゴルフなど、その時々嵌ったものにはのめり込むそうですが、飽きっぽいなんていう一面を教えていただきましたよ。海外で生活されていた時のことや、日本グリーフ専門士協会の初期の頃のお話などもお伺いしているうちに、いつしか緊張も吹っ飛んで、楽しく聴かせていただきました。
とっても落ち着いた雰囲気をお持ちなのですが、ご自身曰く、天然でそそっかしいところもあるのだとか。もしかしたらそのあたりが、なおさんの親しみやすさにつながっているのかもしれません。

その時々の出会いや縁を大切にしながら、相手の想いに寄り添う経験を重ねてこられたなおさん。「安心して」と繰り返し話されていたことが印象に残っています。その言葉に表れているように、なおさんの講座は、学ぶ場としてだけでなく、リラックスできる温かい時間になっていると思います。
様々な立場や状況の中で迷ったり躊躇したりすることもあるかもしれませんが、まずは無料の「入門講座」に参加いただき、その空気を感じていただけたらと願っています。

今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

編集後記

この場をお借りしてなおさんにあらためて御礼を。拙いインタビューに長時間お付き合いくださったこと、心から感謝申し上げます。講師と受講生という垣根を感じさせない柔らかさ、どう伝え、どう寄り添っていくかなど、日々試行錯誤を重ねながら取り組まれている姿勢に、学ばせていただくことがたくさんありました。本当にありがとうございました。

日本グリーフ専門士協会では「わかちあいの会」を無料開催しており、全国どこからでもご参加いただけます。お申込みいただきましたら、ZOOM(オンライン会議システム)の使い方等もメールで案内させていただきますのでご安心ください。

また、グリーフケアを学ぶ第一歩「グリーフケア・ペットロスケア入門講座」も無料で開講しています。支援者として活動したい方はもちろんのこと、グリーフの渦中におられる方にもご参加頂いております。今のご自分の状態を、少し客観視できるようになるかもしれません。私もここから学びをはじめました。