グリーフケアの風景

Landscape

グリーフの渦中より

「夫のために」を失った後 - 関係の中で生きていた私たち

「夫のために」を失った後 - 関係の中で生きていた私たち

こんにちは。グリーフ専門士、寿月です。
最近、気がつくと肩や二の腕のあたりにグッと力が入っていることを感じます。
身体もしっかり緩めながらいきたいですね。

それでは今日も書き進めてまいりましょう。

「役割」は生きる意味になる

大切な人を亡くした後、心にぽっかりと空いた大きな穴。 その暗闇の中で、「これから、何のために生きればいいのだろう」と、自分の生きる意味や存在価値さえ見失いそうになることはないでしょうか。
愛する人を失った悲しみはもちろんですが、それと同時に、私たちは、それまでの自分をも失ったように感じられることがあります。 

私は夫を亡くしてから、それまでの自分が、どれだけ夫のために生きていたかを突きつけられていきました。
「夫のために生きていた」と書くと、なんだかとても献身的な感じがしてしまうけれど、そういうことではなくて、生活や自分の判断基準、そして役割が「夫がいる(家庭がある)という前提」であったということなのです。

健康を意識したり、帰宅時間を気にしたり
余暇を楽しもうと思えたり、節約を考えたり
誰かがいるから意識が向けられていたこと。
動くことができていたこと。
夫との死別後は、あたりまえにご飯を作るとか、部屋を整理するとか、そういう日々の営みにさえ、まったく力が入らなくなってしまいました。

ある意味では、人生におけるやりがいや、生きがいそのものの喪失だったのかもしれません。

「これからは自分のために生きなよ」
「自由に生きればいいじゃない」

周囲からそんな言葉をかけられることがありました。 自分でも、そういうふうに切り替えていかなければいけないのだろうことはわかっているのだけれど……。

ある意味では、無意識に背負っていた役割から解放されたということなのかもしれない。
でも、自分が動かなくても、考えなくても、誰も困らない。それに伴う話し合いも、けんかもない。
何もかも一人で完結していくという現実は、想像以上に残酷なものでした。

私たちは、知らず知らずのうちに「誰かのため」という役割によって生かされているのかもしれません。
何気ない日常のルーティンは、自分のためだけなら、いつでもやめてしまえるものも多かったりします。
けれど、「あの人がいるから」という目に見えない緩やかな役割の糸が、私たちをこの現実の生活に、しっかりと繋ぎ止めてくれている。

その糸がぷつりと切れてしまったとき、私たちは「ただ大切な人を失った」だけでなく、「誰かを支え、誰かに必要とされていた自分」という、自らを突き動かしていたエンジンをも失ってしまったように感じることがあります。

社会からは見えにくい喪失

死別という経験は、ただ「大切な人がいなくなって悲しい」という、目に見える痛点だけでは測れません。
その奥には、それまで自分を生かしてくれていたものを失い、真っ暗な宇宙に放り出されるような、社会からは見えにくい喪失が存在しています。

失った人を取り戻すことはできない。
そして、その人との間にあった自身の役割もまた取り戻すことはできない。

もしかするとあなたにも、亡くなった人のために続けていた習慣や、自然と担っていたことあったのではないでしょうか。
朝の「おはよう」、何気ない連絡、食事の支度、送り迎え。
失ったのは人だけではなく、その人との間に存在していた日々の営みそのもの。

それに代わるものは、もしかしたら存在しないのかもしれない。
だからこそ感じる圧倒的な喪失感は、時に自分を追い詰めるほどに苦しいものでもあります。
と同時に、その痛みは、その人との間で築いてきたこと、育んでいた関係の大きさの証でもあるのではないかと感じます。

何もする気が起きない。 生きている意味が分からない。
役割を見失い、途方に暮れ、自分は無力だと感じたり、焦ったり。
うずくまって息をする。それだけで精一杯な時もありますね。

人を失うということは、その人との関係の中で生きていた自分を失うことでもあります。
周囲から見える以上に、自分を支えていた土台が崩れてしまったような感覚を伴うのかもしれません。

私たち日本グリーフ専門士協会は、答えを指し示すのではなく、急かすのでもなく、あなたが過ごす道のりそのものに同行させていただきたいと思っています。

途方に暮れ、立ちすくむあなたに届きますように。

編集後記

今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。
季節が移り替わってゆく時期は気温や気圧の変動が激しくて、体調を整えておくことが難しいですね。
身体を横にする時間も大事にしながら、労りながら過ごしていただけたらと願っています。 

〇オンラインによるわかちあいの会(無料)・個人カウンセリングの日程確認とお申し込みは「グリーフサポートIERUBA」へ。

哀しみに寄り添うグリーフケア基礎講座
大切な人や身近な人と死別され、哀しみの渦中にいらっしゃる方にもご参加いただける講座となります。
死別後の暗闇の中、知識が今を生きる支えとなりますように。

グリーフケア入門講座ペットロスケア入門講座
こちらの講座は無料で開講しています。
支援者を目指す方、グリーフケアってなんだろうという方はこちらをどうぞ。
私もここから学び始めました。